人権の話「忘れられない教え子」
- 公開日
- 2015/12/07
- 更新日
- 2015/12/07
学校からのお知らせ
4日から10日まで人権集会です。朝会で校長先生が人権の話をしました。
<校長の話>
みなさん、まず耳を両手でふさいで音が聞こえないようにしてください。校長先生がある言葉を言いますからそのその状態で聞いてみてください。
(昨日、すきやきを食べました)
何を言っているかよく聞こえなかった人?
この聞こえない状態が一日中続いたらどうでしょうか?
今日は忘れられない一人の教え子の話をします。
校長先生が初めて先生になったとき、5年生の担任をしました。そのクラスには、生まれつき耳が聞こえない女の子がいました。名前はえりかさんと言います。耳が聞こえないということは、音がどういうものか分かりません。音が分からないと声の出し方が分かりません。うまく言葉を発することができないのです。
例えば、「きほくしょう」は「・・・・」となります。
校長先生はとても困りました。
「どうやって気持ちを伝えたり、気持ちを聞いたりしよう?」
「どうやって授業を教えよう?」
初めて先生になったばかりの校長先生にとって、それは大きな悩みでした。
そんな時に助けてくれたのがクラスの友達です。
授業では隣の席や前後の席の子が、口パクや文字で授業の説明をしてくれました。
体育ではスタートの合図が聞こえないので、隣で肩ををポンとたたいて教えてくれました。
音楽が一番困りました。音が聞こえないので、自分の出している声や笛の音色が合っているのか分かりません。でも友達が手で「上」とか「下」、「長い」とか「短い」を見せて音の調節をしてくれました。
えりかさんの発言には誰も冷やかしたり、笑ったりしません。逆に「彼女の顔を見てゆっくり話す」「彼女の言葉に耳を傾ける」という雰囲気が少しずつできてきました。なぜなら、えりかさんが必死に話を理解しようとしたり、自分の意見を伝えようと一生懸命に声を出しているからです。
キャンプも修学旅行も同じように行きました。学習発表会では皆の前で自分のセリフを堂々と言いました。5・6年と2年間担任し、無事に卒業していきました。えりかさん自身のがんばりと、クラスのみんなの優しさのおかげです。
みなさんは「人権」という言葉を知っていますか?人権とは、人間が人間らしく生きる権利のことです。誰もが同じように持っています。
人によって見た目は違います。できることやできないことも違います。でもその違いで、人を差別してはいけません。悪口を言ってはいけません。いじめは絶対にいけません。
みんなは同じように生きています。毎日学校に来て、勉強したり運動したり遊んだりする権利を持っています。困っている人がいたら助け合うことが大切です。みんなかけがいのない大切な人です。
えりかさんが卒業して30年以上が経ちました。校長先生はその後、彼女とは一度も会っていません。でも1年に1度、必ず彼女は様子を教えてくれます。
これです。(年賀状を見せる)
今、えりかさんは結婚をして小学生の子どももいます。お年寄りの世話をする施設で、介護福祉士として元気に働いています。多くの人の役に立っているのです。
これで校長先生の話を終わります。